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2008年1月24日 (木)

「終年」

第34章
おとこは角を曲がり後ろをちらっと見てユカちゃんが来ていない事を確認してから走る速度を落として早歩きにした。ちょっと冷や汗が出る。なぜ自分が逃げなければならないのか?自分でもよくわからない。久しぶりに人に名前を呼ばれた。
”コンドウさん”
自分の頭の中でこの言葉を反芻する。そうして自分がコンドウさんだと言う事を認識する。初めて名前を与えられたような、誰かに認められたような気がした。それからいつもの散歩コースを回り、久しぶりに中央線に乗って中野に向かった。ブロードウェイの中を歩きまんだらけで立ち読みをする。コスプレショップの前で帽子を目ぶかにかぶった中川翔子とすれちがう。駅の近くの公園に行きベンチに座ると草むらからネコが1匹飛び出してきておとこの方を少しじっと見てそれから警戒心を解いたのかベンチの上にぴょんと乗ってきておとこの隣に座る。
「ニャー」
と一声鳴いておとこの方を見る。そこの円形の公園のベンチに3時間ほど座り何かを考えているようで何も考えていないような雰囲気を醸し出し、ただ座っている。その間近くでトランペットを吹いている少年がいる。3ヶ月前にも同じ少年が同じところでトランペットを吹いていた。楽譜を見ながら時には空を見ながら思い思いに表情を変えてトランペットを吹いている。おとこは実に楽しそうだと思った。こんな有意義な時間はない。好きな時間に自分の一番好きな事をする。これに勝る楽しさはない。脳の先がビンビンする。トランペット少年の電波が波及し、おとこのアンテナを震わせる。おとこはいても立ってもいられなくなって、また中央線に乗って吉祥寺の自分の自宅に戻り絵を描き始める。そのまま5時間が経過する。
ひさしぶりに言葉以外の1回性に出会った。これを濃く深くするのは自分自身だ。テレビがあまり必要ない、あまり見ないという人がいるがおとこはそれに関しては反対的な意見を持っている。テレビの内容は大衆向けに作られている為内容が薄い、本をもっと読め。という人がいるが内容が薄くてもそれがきっかけになって濃く深くするのは自分自身ではないか?受けたインプットの内容が濃くても薄くても深めるのは自分だ。

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